研究テーマ

研究テーマ

硫化物系半導体,ZnO,ZnS, ZnSe,酸化ガリウム系半導体の「分子線エピタキシー(MBE)技術」を中心として,短波長から長波長まで有効活用できる高効率太陽電池,高効率紫外線LED・レーザ,高感度集積型の紫外線光センサー,紫外線光変調器の基礎研究および実用開発を行っています.

高効率太陽電池の研究

太陽光発電は,化石燃料に代わる自然エネルギー利用の中心の一つと考えられますが,発電コストの低減が望まれています.それには,製造コスト削減の他に太陽光から電力への変換効率の向上が有効です.これは設置面積の有効利用にもなります.太陽電池は半導体の働きで光のエネルギーを電力に変換しますが,一つの太陽電池では理論的に30%程度の変換効率が限界です.一方,複数種の半導体からなる太陽電池を積層することで高効率化できることが知られています.

 本研究室では,以下のような太陽電池の研究を進めています.

・既存のシリコン結晶太陽電池を用い,この上に重ねる太陽電池を開発することで,太陽光のエネルギーを有効活用します.

・そこで用いる半導体として,適性があり,本研究室でノウハウを持つリン化ガリウムまたは硫化物半導体を用います.

・各太陽電池から個別に電力を取り出します(4端子型).

このようにして,高効率・低コストを両立する太陽電池の開発 を目指しています. 

ZnS系半導体のp型化と光デバイスの作製

ZnS(硫化亜鉛)は,本研究室でこれまで一貫して研究してきた硫化物半導体で,バンドギャップは3.7eVであり,現在半導体光デバイス材料として主流のGaN(窒化ガリウム,3.4eV)よりも大きく,基本的に紫外光デバイスに適しています.また,古くからブラウン管の青色,緑色蛍光体として使われ,可視発光にも適しています. しかし,半導体としては,基本となるp,nの伝導型のうちp型がこれまで得られず,実際には応用されていませんでした.

本研究室ではこれまでに,ZnSに少量のTe(テルル)を混ぜ,そこにアクセプタとなるN(窒素)を添加することでp型化を実現し,またpn接合の発光ダイオード(LED)動作を確認しました(右写真). この成果をベースとして,応用の一つとしてGaN系半導体などで比較的高効率が得られにくいとされる緑色LEDを目指してさらに研究を進めています.

新規酸化物半導体材料 : 酸化ガリウムに関する研究




高感度集積型紫外線センサーの開発

次世代高性能PET装置等の医療機器のほか,火炎センサー,次世代光ディスクなどに,高性能紫外線センサーの開発が求められています.

そこで,本研究室では高感度集積型紫外線センサーの開発 を行っています.この紫外線センサーの構造は,有機-無機ハイブリッド構造になっており,無機層は超高真空中で結晶成長を行う分子線エピタキシー法で作製し,有機層はスピンコート法とフォトリソグラフィーを用いて作製します.

現在,80%以上の効率,3000倍以上の光信号増幅,500時間以上の動作を実現しており,10素子のアレイ化にも成功しています.

酸化亜鉛のp型化と光デバイスの作製

白色照明,殺菌・浄水,医療分野などへの応用を目指して,ワイドギャップ半導体である酸化亜鉛(ZnO)のp型伝導制御とLED応用に関する研究を行っています.

プラズマ酸素ガスを使用した分子線エピタキシー法により,サファイア基板上にp型酸化亜鉛を作製することに成功しており,LEDの実用化に必要となる正孔濃度(1018cm-3)を実現しています.

紫外域シュタルク効果型光変調器の開発

外部電界により電子状態を制御して,透過光強度を高速制御する紫外線領域の光変調器を開発しています.

分子線エピタキシー法で作製したZnO/ZnMgO量子井戸に電子・正孔を閉じ込め,電界を印加することによって生じる量子閉じ込めシュタルク効果を利用して光の吸収エネルギーを制御します.紫外域の光変調器が実現されると,ホログラム記録,衛星間通信,見通し外ワイヤレス通信などの応用が期待されます.